今、この地で生きる「男女5人の思い」

 「どこで生きていくのか」を考える時には、多かれ少なかれ、「何の仕事をするのか」という問いにぶつかる。それは、リモートワークなどの多様な働き方が広がりをみせる昨今でも、決して無関係ではない。逆に、仕事を軸に住む場所を決める人たちも多い。
 では、「いわきで、生きる!」の場合は? もちろん答えは千差万別。だが、移住したりUターンして、情熱を持って働く人たちがいる。胸に抱くのは「恩返し」や「夢の実現」。大都市にはない魅力を感じ、今、この地を舞台に活躍する、男女五人を紹介する。

愛された医療を渡邉さん

知識、経験フルに使う 〝すべてに感謝しています〟

渡邉 良太さんRYOUTA WATANABE

 「地域にしっかりとした医療を提供したい。人材の就業・育成でも貢献したいですね」と話すのは、親しみやすいと評判のおなはま腎・泌尿器科クリニック院長の渡邉良太さん(55)。
 クリニック院長として人工透析、一般的な泌尿器治療をはじめ、学校医、産業医としても活躍。さらには、健康関連のアドバイザーとしても尽力を惜しまない。
 順天堂大学医学部を卒業後、同大学医学部附属順天堂医院外来医長を経験し、37歳でいわきにUターン。地元の病院に勤務後、2019年7月、小名浜地内に開業。
 「開院してから3年間、本当に必死でした。手伝いに来てくれる非常勤の医師10人を含め、看護師さん、医療事務の方など多くの人に支えられて今があります」と、笑顔で振り返る渡邉さんは、「全てに感謝するようになりました。地域の介護など、今後は次のことも考えていきたいですね」と、前を向く。
 「地元に戻ってからは、不自由を感じたことはなく、子育てもしやすかったです。東京でできることは、いわきでもできますし、コロナ禍の今は、密にならずに生活できるのは大きなメリットです」
 大都市にいなくても、最新の情報がインターネットで手に入り、学会にズーム(ウェブ会議サービス)で参加できるようになったことで、仕事の効率が上がり、時間的な余裕もできた、と加える。
 「(コロナ禍もあり)大変な時期ですが、良い変化も起きています。いろいろな人の知識や経験をフルに使い、地域に愛される医療機関に成長させたいですね」

profile

 1967年2月生まれ。大学時代は、バレーボール部に所属。泌尿器科を始めたきっかけは、「人工透析の治療を必要とする身内がいた」ため。晩しゃくはビールを1杯、ワインを少々。同クリニックは、小名浜林城字塚前13−3。電話84−5011

 

 

子育てにも励む綾瀬さん

自宅にスタジオ新設 リモート収録や海外とも

綾瀬 マリアさんMRIA AYASE

 いわゆる〝魅力的な仕事〟は、東京に住まないと出来ないかと言うと、そうではない。例えば声優もそう。
 「東京に住んでいなくても、声優でいられることを証明できればうれしいですね」
 笑顔でこう話すのは、主に洋画や海外ドラマの吹き替え、CMナレーションなどを手掛けている、綾瀬マリアさん。7年前、結婚を機にいわきに移り住んだ。
 綾瀬さんは、兵庫県神戸市生まれ。音大の声楽科でオペラを学んだ後、舞台女優として各地を回り、2012年に声優として活動を始めた。
 声優になりたいという希望はもともとあったが、回り道をしたのは、「きちんと勉強してからその道に進もうと思った」から。今では、幼い娘の子育てに励みながら仕事と向き合う日々。その中で、変化も感じている。
 「出産後に不思議と依頼が増えたんです。娘が運んできたくれたのかと思ったくらい。年齢を重ねて声質が変わり、海外の役者の娘役の声とマッチするようになったことも、プラスに働いたようです」
 自身の音声編集の技術を生かし、昨今のコロナ禍で、自宅にスタジオを構えた。リモート収録や海外とのやり取りを含め、仕事の幅を広げることができた。
 一方で、「リモート収録が増えたとはいえ、多くはナレーションの仕事。やはり、演技が入ると東京に行かないとだめ。小さな子がいるので、日帰りです」と語るが、「いわきは子育てをしながら、東京で仕事をするのにちょうどいい距離。移動時間も有効活用していますね」。地方での生活を楽しんでいる。

profile

 夫と娘の3人暮らし。いわきに来て「絵本の読み聞かせ」をはじめ、日本朗読検定協会の認定講師として、最上位のプロフェッサーの資格を取得、地元のイベントなどに参加している。このほか、地域おこし事業への協力も

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